副腎の疾患
- 副腎の疾患について
- 副腎不全
- Cushing症候群
- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫・パラガングリオーマ
副腎の疾患について
副腎とは、左右両方にある腎臓という臓器の上に、ちょこんと乗っかっているような臓器です。下の図で、オレンジ色の豆のような形の臓器が「腎臓」で、その上の黄色をした三角に近い形の臓器が「副腎」です。副腎は、生命の維持に重要な様々なホルモンを出す臓器(内分泌臓器)であり、主に下記のようなホルモンを分泌します。
副腎から分泌される代表的なホルモン
- コルチゾール:ストレスに対する反応など非常に多彩な作用を持つホルモンです。
- アルドステロン:血圧の調整などに関わるホルモンです。
- 副腎アンドロゲン:性に関与するホルモンです。
- カテコールアミン:アドレナリンなどに代表されるホルモンです。
本稿では、これらのホルモンの異常に伴い引き起こされる疾患、その他副腎に認められる腫瘍について、受診の際に参考になりそうなことを記載します。
副腎不全
副腎不全とは、様々な原因で副腎皮質ホルモン (主にコルチゾール) が不足している状態となり、多様な症状を呈する疾患です。コルチゾールはストレスへの対応にも関わるホルモンであり、不足している時に感染や外傷などのストレスにさらされると、ストレスに対応できずに、急な体のバランスが崩れ、意識障害や命に関わるようや状況に陥ってしまうこともあります。
副腎不全の症状
副腎不全ではコルチゾールをはじめとした副腎皮質ホルモンが不足し、下記のような多彩な症状が出現します。
副腎不全で認める症状
- だるい、疲れやすい
- 食欲がない、体重減少
- 吐き気、むかつき
- 腹痛、便秘、下痢
- 無気力、不安、やけに眠い
- 低血圧
- 微熱
- 性毛が抜ける
- シミが多くなる
これらの症状は、一見すると何が原因かわからないようなものも多く、まずは副腎不全の可能性を疑ってかかり、検査する事ではじめて診断される事も多いです。
副腎不全の検査所見
- コルチゾール分泌の低下
- ACTH (下垂体のホルモン) の正常〜高値
- 低血糖
- 白血球のバランスの変化
- 貧血
- 低ナトリウム血症
- 高カリウム血症
- 高カルシウム血症
治療
コルチゾールの不足が引き起こす症状のため、コルチゾールの補充が治療になります。
- コルチゾールの補充
- その他の副腎ホルモンの補充
Cushing症候群
Cushing症候群は血液中のコルチゾールが多すぎることで、様々な外見上の異常や高血圧、その他の代謝の異常をおこす疾患のことです。脳卒中や心筋梗塞、静脈血栓症などにかかりやすくなるなど、様々な健康上の問題が生じやすくなります。また、ACTHというコルチゾール分泌を促すホルモンの増加が原因のこともあります。
適切な診断•治療、合併症のケアが大切です。
症状•初見
特徴的な外見を呈し、外見だけである程度疾患の有無を推測出来ることもあります。
- 体重増加 •肥満
- 顔つきの変化 (満月様顔貌と表現されることも)
- 赤ら顔
- にきび
- 月経不順
- 多毛
- お腹に赤い線が出来る
- 情緒不安定
- 背部痛
- 筋力低下
- 頭部の脱毛
- 味覚異常
- その他
検査
- 血中コルチゾール濃度: 高値
- 尿中コルチゾール分泌: 増加
- デキサメタゾン抑制試験
- CRH負荷試験
- 腹部CT
- 下垂体MRI
- PET-CT
- 副腎腫瘍の存在
- その他
治療
- 副腎皮質ホルモン合成阻害薬の内服
- ACTHを抑制する薬剤の内服
- 腫瘍の摘出
- その他
上記の様な検査、治療を病態に応じて行います。原因により治療方法が異なります。
また、上記の検査には当院では難しいものも多く、本疾患を疑った場合は一度は検査のため大学病院などの、より高度な医療機関に紹介させて頂く場合もございます。
原発性アルドステロン症
本疾患は、アルドステロンと呼ばれるホルモンの分泌が過剰になる事で高血圧などが引き起こさられる疾患です。
高血圧全体の5〜10%が本疾患とされており比較的一般的な疾患といえるでしょう。
なかなか血圧が下がらない場合など、一度疑って検査してみるべき疾患です。
アルドステロンは、副腎から分泌されると全身のナトリウム、カリウムなどの電解質に働きかけ、血圧を調整する作用を発揮します。このアルドステロンが過剰になると、高血圧などの病態をおこします。
症状
- 多飲、多尿、夜間頻尿
- 脱力
- 筋力低下
- こむら返り
- その他
検査
- 高血圧
- 血中アルドステロンの高値
- 血中アルドステロン/レニン比の高値
- 副腎腫瘍の存在(CTなどで検査)
- 低カリウム血症
- カプトプリル試験
- 生理食塩水負荷試験
- フロセミド立位負荷試験
- 迅速ACTH負荷試験
- その他
治療
- 手術:副腎腫瘍の摘出など
- 内服薬:ミネラルコルチコイド拮抗薬など
高血圧で通院しているけれど、なかなか良くならないような場合など、ぜひ一度ご相談ください。
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
本疾患は副腎などからアドレナリンなどで知られるカテコールアミンが過剰に産生される疾患です。
高血圧に伴う頭痛や動機などの症状、高血圧がなかなかよくならなかったり、また副腎の腫瘍をたまたま指摘されることで発見されることが多いです。
悪性化することもあり、慎重な診断、治療、経過観察が必要な疾患です。
症状
- 不安
- 立ちくらみ
- 汗が多い
- 頭痛
- 不整脈
- 動悸
- 息が苦しい
- 胸の痛み
- 気持ちが悪い
- 体重減少
- 便秘
- 意識障害
検査
- カテコールアミンの高値 (血液、尿)
- 副腎腫瘍の存在 (CTなど)
- シンチグラフィ
- PET検査
- 遺伝子検査
- など
治療
- 腫瘍の切除
- 交感神経遮断薬の内服
- チロシン水酸化酵素阻害薬
- 化学療法
- 放射性物質による内照射療法
- その他