甲状腺の疾患
甲状腺は、首の前面の皮膚の下で気管の前に蝶のような形で張り付いている臓器です。甲状腺からは、主に甲状腺ホルモンが分泌され、全身の代謝を調整しています。甲状腺の異常は、大きく下記の4つに分類されます。本稿では、これらの異常について、受診の参考になりそうな点を解説します。
当院では、身体診察や血液検査、超音波検査などで、甲状腺の状態を調べ、これらの異常に対して、適切な治療方針を検討して参ります。
(注)甲状腺超音波検査は、現在のところ金曜日の午後のみ実施しております。予めご了承ください。
- 甲状腺ホルモンが過剰になるもの(甲状腺中毒症)
- 甲状腺ホルモンが低下するもの(甲状腺機能低下症)
- 甲状腺のできもの
- その他 (腫大、感染症など)
甲状腺ホルモンが過剰になるもの
甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺中毒症」では、以下のような症状が認められます。
- 多汗、暑がり
- 手の震え、動悸
- 倦怠感
- 食欲亢進
- 体重減少
- 筋力低下
- 頻脈
- 心房細動
これらの「甲状腺中毒症」を引き起こす代表的疾患には、下記のようなものがあります。
甲状腺中毒症を起こす代表的疾患
- バセドウ病
- 亜急性甲状腺炎
- 無痛性甲状腺炎
- 機能性結節性甲状腺腫
- 妊娠性甲状腺機能亢進症
- 下垂体ホルモン不応症
- その他
これらの疾患は、病歴や血液検査、超音波検査でかなり鑑別を行うことが出来ます。
当院ではこれらの鑑別に必要な医療機器を備えております。
甲状腺中毒症を疑う場合は一度ご相談ください。
(注) 甲状腺超音波検査は火曜日と金曜日の午後のみとさせて頂いております。予めご了承ください。
甲状腺ホルモンが低下するもの
甲状腺ホルモンが低下する「甲状腺機能低下症」では、以下のような症状が認められます。
- 食欲低下
- 便秘
- 徐脈
- 筋力低下
- 関節痛、筋肉痛
- 毛が抜ける、皮膚がガサガサしちる
- 声が枯れる
- 無月経、月経過多
- その他
これらの「甲状腺機能低下症」を引き起こす代表的疾患には、下記のようなものがあります。
甲状腺機能低下症をきたす代表的疾患
- 橋本病
- 萎縮性甲状腺炎
- 下垂体前葉機能不全
- 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎の回復期
- 甲状腺ホルモン不応症
- その他
これらの疾患も、病歴や血液検査、超音波検査で鑑別を行うことが可能です。
甲状腺機能低下症を疑う場合は一度ご相談ください。
甲状腺の「できもの」
甲状腺内には良性の結節から悪性腫瘍まで、様々な「できもの」が出来ることがあります。はじめは無症状のことも多く、健康診断などで初めて指摘される事も多いです。
悪性腫瘍のなかには急速に進行するものもあり、「首の辺りが何か変だな?」と思ったら一度検査することが大切です。
当院では、血液検査、超音波検査の体制が整っており、また必要に応じてより高度な検査•治療のできる医療施設へ紹介致します。
甲状腺の「できもの」には以下のようなものが考えられます。
甲状腺の「できもの」
- 腺腫様甲状腺腺腫
- 嚢胞
- 濾胞腺腫
- 癌
- 機能性結節性甲状腺腫
悪性腫瘍などが疑われた際には、より高度な検査が行える医療機関での精査が必要です。
その際は、信頼のおける医療機関へ、しっかりとご紹介させて頂きます。
その他
甲状腺の疾患にはその他、「感染症」や「炎症」、「腫大」などがあります。
それぞれについて、受診の参考になりそうな事を記載します。
甲状腺の感染症や炎症疾患
甲状腺の感染症や炎症疾患には、代表的に下記の3つがあります。
- 急性化膿性甲状腺炎:甲状腺への細菌感染症です。
- 亜急性甲状腺炎:甲状腺へのウィルス感染が主な原因と考えられています。
これらの疾患は、発症早期は甲状腺組織が破壊されるため、漏れ出た甲状腺ホルモンの影響で一時的な甲状腺機能亢進状態になることがあります。この状況は、バセドウ病などの甲状腺機能亢進症を示すものと類似した症状を示しますが、治療方針が大きく異なるため慎重な鑑別が必要です。
さらに、抗菌薬などの治療により病状が軽快すると、次は甲状腺機能が低下してくることがあります。細菌やウィルス感染症で甲状腺組織が破壊された影響で、甲状腺ホルモンの量が低下している状況といえるでしょう。
これらの病気の経過は、専門医でないとなかなか十分には経験していないこともあり、注意が必要です。
甲状腺の腫大
甲状腺全体が大きくなることがあります。
下記の疾患で甲状腺が大きくなることがありますが、鑑別には血液検査や超音波検査などが必要です。
甲状腺が腫大を来す疾患
- バセドウ病
- 橋本病
- 単純性甲状腺腫
- その他
当院では、これらの鑑別に必要な医療体制を整えております。
首の前の方が腫れてきた、など気になる症状がある方は、一度当院にご相談ください。